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手慰み


今晩は88です。今回は少しばかり趣きを変えて、今までコソコソ書いてた文章晒します。1万2千字だからちょっと分割して記事にしますね。





 シロとクロそれが全てだった。足元の白と周囲を染め上げる黒、それがオレの居る世界だった。酷く冷える。
何度、歩みを止めその場に座り込んでしまおうかと思った事か、しかしながらオレは命意地の悪い人間であるらしくトボトボと当てもなく前に進んでいた。いや、もはやどちらが前でどちらが後ろなのかも定かではない。夜の冬山では現実感すらも希薄になってくる。寒い。
頭が回らなくなってきているらしく思考もおぼつかなくなってきている。最悪。
目の前は永遠に続くと思えるような黒、畜生。
足元は寒々しい白、ボケッ。
顔を上げれば黒、クソッ。
白。
黒。
白。
黒。
白。
黒。
白。
黒。
赤。
白。
黒。
白。
 ん、赤? なんでこんな所に…もう一度見れば暗闇の中には紛れもなく明かりがぼんやりと見える。
オレは何故か「助かった」ではなく「もうおしまいだ」という絶望感が心を支配するのを感じた。こんな状況で見るものなど、どうせ幻覚に違いないからだ。しかし、一縷の希望からその明かりを目指してオレは歩みを進めることにした。


 薫が近づいて見ると闇の中に一棟の山荘が現れてきた。雪は止み、薫は山荘の回りに積もった雪を踏みしめ歩いていく。ふと振り返ると今まで自分が歩いてきた足跡がひとすじのラインを描いていた。前を向き山荘にさらに近づけばそれは確かにそこに存在するものであると確認できる。どうやら幻覚ではないらしいと考えた薫は住人に助けを乞うために玄関のドアを叩いてみた、すると応対の声がすぐに聞こえ、扉が開いた。扉が開くなり薫は有無を言わせずさっさと山荘の中にもぐりこんでしまった。無礼にも程あるががこういう時は少しばかり図々しくならざるを得ない。と後に薫は語っているが基本的に図々しい性格なのだ。
 玄関に入るとリビングとロビーが一体になっており、そこには三名の女性が居た。女性たちは突然の闖入者に非難がましい眼差しを向けるでもなく、困りはてた遭難者を労わるでもなく、まるで薫がここに来る事をあらかじめ見越していたかのような態度で迎え入れた。
「突然お邪魔立てして申し訳ございません。実は…」
「遭難していたんですよね。薫さん。案外到着、早かったですね。良かった良かった」
「なっ…」
「『何故自分の名前を知っているのか?』ですね? まぁ簡単に言えば私たちが此処に呼んだんです。寒かったでしょ? お疲れ様でした!あ、自己紹介忘れてましたね。私の名前はアリスって言うんですよろしくお願いしますね!実はちょっと困った事があってですね、それを薫さんには解決して貰えたらなぁ、って思ってるんです。良いですか?良いですよね!じゃあ早速状況の説明を…」
アリスと名乗る女性はこちらの混乱などお構いなしに勝手気ままに話し続ける。さすがにこのままでは理解できる事も理解できないと考えた薫はアリスの言葉をさえぎり、
「ま、待ってください。さっきからそんなまくし立てる様に説明されても状況がまったく理解できませんよ、いきなり見ず知らずの人に名前を呼ばれて、『ここに呼び寄せた』と言われて、その上頼みごとまでされている。もう少し分かりやすく説明して貰えませんか」と述べた。
山荘に居た三人のうちの一人が薫の抗議に呼応した。
「そうだぞ、アリス。お前は説明が下手すぎる。ここは私が説明しよう。薫さん済まないが私の話をまず一通り聞いて欲しい。質問は話が終わったら受け付ける。良いね?」
アリスという女性に比してこの女性はある程度はマトモだと薫は思った。少々キツイ印象がある口調ではあったがそれも女性の切れ長で釣りあがった目元とその黒髪とに妙に似合っていて好感触に感じられる。
「まずは自己紹介から。私はクイーン、それでさっきの赤髪でうるさい奴がアリスってのはもう知っているね。あとそこのソファに座ってる銀髪がカァって言うんだ。あともう一人ポーってのが居るがそれは後で紹介しよう。だからここに居るのは君を入れて5人って事になる。」
そこで一拍クイーンは一拍置いて薫に「分かってるか?」とばかりに目配せをし、話を続けた。
「正直に言えば君がここに来る事は必然だった。それは魔法とでも言えば良いかな?それを使って君をここに呼び寄せた。ともかくここに居る者は君を除いて人間という存在ではないんだ。理解できなくても仕方はないが事実だ。まぁ人の形をしては居るが魔物とか妖怪とか、モンスターでもかまわないがそういう存在だと思ってくれればいい。要するに超常の存在なんだ。薫君、色々と言いたいのは分かるがとりあえず話を聞いてくれ。」
あまりにも唐突な発言内容に思わず「はぁ?」と言ってしまいそうになった薫を制しクイーンは話を続ける。薫のクイーンと名乗る女性に対する先ほどまでの印象は音を立てて崩れ始めていた。
「人間でないのだから当然魔法を使う。そうやって君をここに呼び寄せた。呼び寄せたのにはちゃんとした理由がある。それについては現場を見せた方が理解は容易だと思われるから部屋に案内する。ついてきて欲しい」
多分ここはドラッグパーティの会場か何かなのだろう、このクイーンという女は正気ではないと薫は判断していた。下手に相手に逆らうのは危険だろうから話を合わせる事にするしかないと思うと薫はウンザリしてしまっていた。そしてこの山荘の住人に助けを乞わなければならない自分を呪った。そういえばまだ毛布も、着替えも、暖かい飲み物も差し出されていない。思わず呪詛の言葉が漏れそうになっている。
「あのー、それよりもまず何か暖かい物でも飲ませて差し上げた方が良いのでは? 薫さんは仮にも遭難していたんですし…寒かったでしょう? すいません」
ここにきてやっと銀髪の女性―カァが口を開いた。おずおずとした態度で消え入りそうな声ではあったがその優しい言葉に薫は安心した。――良かった、好き勝手、自由気ままに話すアリスやこっちの事はまるで心配しない冷血女のクイーンといった連中なんてクソ食らえだ、とさえ考える程であった。
 毛布や着替えなどを用意され部屋の中で一番暖かい暖炉あたりに座らせてもらうとやっと一心地ついた薫は煙草が吸いたくなってきたので「煙草いいですか?」と言うやいなや、返事を待たずに口に咥え、火をつけようとした。少々礼儀を失した態度ではあるが確かにこんな妙な状況では吸いたくなるのも仕方のない話ではある。しかし火は点かなかった。よく見れば煙草の先端が灰色に染まっている。すると近くに居たアリスがニヤニヤしながら薫に声をかけてきた。
「スミマセン、ここで吸うのは止めてもらえますか?私とカァちゃんは吸わないんです。あ、ソレですか?すごいでしょ?石化魔法ですよっ、煙草を石にしたんです。はじめて見たでしょ?」
薫は良く判らないが目の前で起こった事をタチの悪いマジックか何かだと判断した。少なくとも魔法などというモノを信じる事は出来なかった。加えてアリスの馬鹿にしたような台詞にいらだちを覚えた薫が憮然としているとクイーンが声をかけてきた。
「アリス、人をからかうのは止めておけ。薫さん済まないが喫煙者には住みにくい世の中になったという事は理解して欲しい。私も煙草を吸う時は外で吸わなければならなくて辛いんだ。先ほどの魔法についてだが…まぁ信じなくても構わないがとりあえずは聞いてくれ君が信じようが信じまいが『この世界』には存在する。魔法というものは何でも出来ると言い切ってしまえる程の技術だ。倫理観と使い手の錬度が許すのならば死者でさえ息を吹き返す。先ほどのは石化魔法だが、その石化魔法一つとっても様々なモノがある。魂のこもった生身の体、要するに有機体といえば言いかな?それのみを石にするもの、身に着けている衣服すらも彫像の一部にしてしまうもの。ジワジワと足元から石くれに変えていくもの、一瞬で石化させてしまうもの。エトセトラエトセトラ、ってワケだ。魔法を使わなくても特殊な薬品を使えば同じような結果をもたらす事も出来る。この『石化』も今回の問題に絡んでいるのだが…。そろそろ体も温まってきたころじゃないか?よければ現場に案内したい、そこでまた詳しく説明させてもらうから」
どうやらクイーンはさっさと『事件』とやらを解決させたいらしく先ほどから薫を急かしてばかりいる。薫はもう少し暖炉の前で温まっていたかったがいい加減しつこく急かされるのも飽きたので立ち上がってクイーンについていく事にした。さも大儀そうに歩くのは薫からクイーンへのせめてもの抗議だろう。
階段を上がり左を向くとそこは各人の個室となっているらしく部屋数は向かって左手に2部屋、反対側には3つの部屋があった。そのうちの一つ反対側の三部屋の一番右手側、階段上がって真正面にある部屋の前に案内された。
「ここが現場だ、部屋はこじ開けた。」
扉が開け放たれると凍えるような空気が顔に当たり薫は思わず眉を歪めた。あとからその空気は割れた窓ガラスから進入してきた外気であるとわかったが、事件というのは割れた窓ガラスの事ではないとすぐに理解できた。
部屋の真ん中には一体の石像がある。精巧な作りのソレは後頭部で束ねた髪の毛の一本一本でさえも再現したものであった。驚愕に満ちたその表情で外を見つめるその瞳には何も写してはいない。驚愕の表情さえなければ相当価値のあるものと大衆には受け取られるだろうがそれ単体では何に驚いているのかが汲み取れないため何かのオブジェの一部としか受け取られないだろう。服は一部が砕けて絨毯の上に散乱しており、砕けた服のすき間からは彫像の肌が見えていた。もしかしたら男性ならば艶やかな灰色のその肌に何かしらの色気を感じていたかもしれないがオブジェに性的な魅力を感じたとするならばピグマリオンもいい所であろうなと薫は考えていた。
「これが私たちを悩ませている事件だ。石にされた私たちの友人で名前はポーという。彼女をどうか救って欲しい。」
薫はこの状況に納得はしてはいなかったがとりあえず黙っておく事にしてしかめ面をしてクイーンに話を続けさせた。
「先ほどの説明に付け加える必要があるな。石化を解除する魔法というものも存在する。だがそのためにはどのようにして石にされてしまったのかを理解する必要があるんだ。例えば蛇に噛まれたらそれに対応する血清を打つ必要があるだろう?アレと同じ事だ。そして今回ソレを知るためには彼女を石にした存在を知る必要がある。薫君協力してくれ、君の力が必要なんだ。」
「まぁ拒否権はないんですけどねっ!あぁ、それともし事件解決って事にならなければぁ、あなたはオブジェですからっ、本気出してくださいね!」
アリスのあまりの言い草に思わず抗議を口にしようとした薫だったがクイーン、カァの表情もアリスの台詞に同調するものであった。どうやら事前に三人で決めたことであるらしい。薫としては『魔法』などといったものの存在は到底肯定したくはなかったが先ほどまでの自分の体験からしてこれは事実であると思うしかなかった。脅されて不承不承ではあるが薫は彼女たちに従う事しかない。もし事件を解決出来なければ自分も目の前の女性と同じ姿にされてしまうと思うと背筋が寒くなる。
「分かりました。協力させてもらいます。ただ二つ条件があります。事件を解決したならば自分を無事帰す事、それとあなた方は捜査には全面的に協力する事です」
「約束は守ります。私たちもあなた方人間と同じように嘘はつきますが良心も同じく存在しますから。」
カァが約束をしてくれた。口約束ではあったが彼女の眼差しから真剣なものを感じ取った薫は心から信用したわけではないが一応納得する事にした。
「それでは、まず何があったのかを詳しく教えてください」
そこでクイーンが事件のあらましを述べ始めた。
「事前に三人で何があったのかを整理してある。まず、そもそもこの山荘に私たちが来た目的は単に旅行だった。もともとこの山荘はカァの両親が持っていた物で、カァが私たち3人に声をかけてくれたんだ。ここに着いたのは午後だった。正確な時間は思い出せないが5時あたりだったはずだ。その後、本格的に旅行を楽しむのは明日からにして皆、思い思いに過ごした。リビングで話をしたり…、夕食を皆で作ったり…だな、まぁ私は料理が下手だから殆ど煙草を吸っていたようなものだが、皆で夕食を食べ終えるとまた後で呑みなおそうと約束して皆自由に過ごした。そしてアレは…」
「今から一時間半ほど前、ですからたぶん十時ごろです。」
「そうだった。補足ありがとうカァ。失礼、話を続けさせてもらう。十時ごろ私は煙草を吸いに玄関から外に出ていた。まぁもちろん山荘からそんなに離れた場所で吸っていたわけではないが。ポーは部屋に引っ込んでいた。多分一人で読書でもしていたか日記でもつけていたんだろう。カァは一階の風呂に入っていた。風呂場はアリスが居たソファの向こう、奥の扉だ。それでアリスは…なんだったかな?」
「ドラゴンボール!」
「…だそうだ、一階ロビーのソファに寝転んで漫画を読んでいたらしい。その時ガラスが割れる音がした。この音は私とアリスの二人が聞いている。カァはシャワーの音が邪魔になったらしく聞こえなかったらしいが、何事かと私たちが騒いでいるので異変に気がついたらしい。三人でガラスの割れた部屋がないかを調べて回ったのだがどこの部屋もガラスが割れては居なかった。あらかた割れたガラスを探し終えたあたりで私たちは部屋からポーがまだ出てこない事に気がついた、騒ぎに気がついて顔を出すわけでもなくずっと夕食の後から姿を見せていない。もしかしたらポーの部屋のガラスが割れてしまったのではないかと思い三人で彼女の部屋まで行ったのだが、呼んでもポーは部屋から出てこなかった。扉には鍵が掛かってはいなかったようだが何かが引っ掛かっていたのか開かなかった。次第に心配になってきた私たちはドアを破ることにし、アリスが体当たりをしたら以外とアッサリ扉は開いた。そうしたら中にはこのような姿になったポーが居た、というわけだ。そして私たちは協議し、その結果誰が外部の第三者の目から事件を観察してもらうべきと判断した。そして君がここに呼び寄せられたというわけだ。」
クイーンの説明は以上であった。薫は説明を聞き終えると神妙な顔つきで床に散らばった服の破片を調べ始めた、比較的大きな破片が多く、中には衣服のどのパーツであったのか分かるものもあった。次に部屋に備え付けてあったゴミ箱を調べて見ると中にはお菓子の包み、書き損じたメモ、空き缶。等が見られた。メモは被害者が書いたものだろうか字が汚いため内容が良く判らなかったが、あわてて書いたものである事だけは察せられた。次に割れた窓ガラスに近寄って見る。床には割れたガラスが散乱している。窓ガラスはクレセント錠が付いたよくあるタイプのもので、引き違い戸、窓全体の大きさは縦が80センチ程度、横はそれより少し短いぐらいといったところであった。片側のガラス一枚のみが割られていた。
「どうやら犯人はそこを割ると錠を開け、中に進入したらしい。要するに外部犯の仕業だ。少なくとも私とカァはそう見ている。だがアリスのヤツが…」
「だってクーちゃん、おかしいじゃないですかぁ!もっとバァーンっ!!って窓を破ればいいじゃないですか、何でお上品に割る面積を小さくしてるんです?犯行を隠したかったんですか?しかも結局音で気づかれるなんてマヌケですよぉ」
アリスの話し方は一々薫の精神を逆なでするような話し方ではあったが言っている事は確かであった。割れた窓ガラスの面積は全体の大きさに対して比較的小さく拳が入ればそれで良い、という程度のサイズであった。
「けれど、これはやっぱり私たち以外の者がやった事だと思います。音に関しても結局、面倒になったんでしょう」
カァはアリスにそう言って反論した。確かに外部犯説は彼女たちには魅力的なのかもしれない。外部でないならば内部、つまり犯人は彼女たちの中に居るという事になってしまう。カァの表情からそんな事は到底認めたくない事実なのだろうと薫は察し、そんなカァの優しさを無為にするのも心苦しかったため、「確かにソレも一説ですね」と返答した。
窓ガラスに見飽きたのか、薫は次に開かなかった扉、正確には開けにくかったドアだが、そこの前に戻って見ることにした、のだがその近くの棚が少しばかりずれていたためか小指をしこたま打ち付けてしまいしばらく身もだえしてしまうハメに陥ってしまった。その様子をアリスには笑われ、クイーンには呆れられ、カァには心配されてしまい何とも惨めな思いが薫の心を支配した。落ち着いてからよく見るとドアノブに傷が付いている事が分かり、ドアの下には石の破片が散乱していたが、それ以上見るべきものはなかった。扉の方は閉じた状態では隙間がなかった事が確認できた。
「見るべきモノは見たし…次はあなた方のお話を聞きましょうか。」
「聞きたい事とは?薫君」
「ま、それは一階に戻ってからゆっくりソファに座ってしましょう、と、その前に各人の部屋のゴミ箱を一階に持ってきましょうか、たぶん使われてない部屋が怪しいとは思いますが。あと薬品類、石化させる薬があるんだそうですね、それを探しましょうか。あ、手分けしてバラバラにならないで、4人仲良く皆で行動しましょう」

 一階ロビーに各部屋のゴミ箱が集められそれぞれどこの部屋にあったものなのかを質しながら薫は中身を調べ始めた。薬品類の類はすべての部屋を探したが見つからず、見つけられたのは風邪薬や救急箱の類くらいしであった。
「これが空き部屋のゴミ箱ですね…うんあったあった、コレコレ」
薫はゴミ箱から粘着面がキラキラ光っているガムテープを取り出すとそれを机の上にポイと投げ捨てると、質問を投げかけ始めた。
「この山荘の風呂に窓は付いてますか?」
「いえ、窓は付いていません。換気扇で空気の入れ替えを行うだけです。…もしかして私に何か関係があるんですか?」
カァは不安げな表情でたずねるが薫は曖昧な笑みで答えるだけであった。
「ところで、先ほどクイーンさんが仰っていましたが魔法には錬度が関係しているそうですね、出来る事と出来ない事というのは個人の技術に依存する物だと考えて良いんですね?」
「えぇ、ただ薬を使ってやる場合は別です。アレは単純に決められた素材を決められた調合法で薬品にすれば良い、だからよほどの脳無しでもない限り本を見ながら手順に従って求める薬を作り出す事は出来る。対して魔法の場合は材料が必要ない、ただその個人によって扱える魔法が変わってくる」
「あなた方は皆石化魔法が使えるんですか?使えるのならばどの程度使えるのか、どのようなものが使えるのかを教えて欲しいですね。」
アリスがまず口を開いた。相変わらずの口調で。
「私は、アレです、煙草を石っころにしたでしょさっき。物も人間も何でも石に出来ますよ、まぁコントロールは下手なんで結構余計なものまで石にしちゃうんですけどねぇ。ははは。だからさっきのアレ、ホントは薫さんもまとめて一瞬でカチーン!だったかもしれないですよぉ、あははは!」
薫は出来る事ならこのアリスを何とかして犯人にしたてあげたいところであった。別に外部犯が存在しようと仮にカァやクイーンの二人のうちどちらかが真犯人でも構わない、それよりもこの女が気に食わない。それが理由である。そんな事を薫が考えていると続いてクイーンが話し始めた。
「私のも大体同じようなものだ、もっともコントロールはそれなりにしっかりしていると自負しているが。」
「私の能力はクイーンさんやアリスほど力があるわけではないんです。石にできるのは肉体のみですし、石化のスピードもゆっくりとしかできないし…。お二人は一瞬で固める事もできるんですが……」
「一応聞きますがポーさん、でしたか?彼女はどうなんです?」
「ポーは石化魔法は扱えなかった、雪女の眷属だったから。人を石には出来ないが代わりに何でも凍りつかせる事が出来る。これは私たち三人には真似できない事だ。」
「そうですか、あなた方の能力については十分に分かりました。ついでにポーさんの生前の…失礼、ポーさんが生身の時の姿が分かるものはありますか?」
それを聞いてカァがデジタルカメラを持ってきた。中には事件が起こる前までの四人の旅行を楽しむ様子の写真と事件直後の現場写真が収められているという。最初からこれを出してくれれば少しは手間が省けたかもしれないと薫は心の中で舌打ちをした。
「すいません、薫さん。私も慌てていたものですから、お見せするのが遅れていました。あ、そこのボタンを押すんです。そうすると次の写真が…」
カァから操作を説明してもらいながらカメラ内に収められた写真を次々と確認し、その後カメラをカァに返しブツブツと独り言を言い始めたかと思うと唐突に「煙草吸ってきます。外に出ればいいですよね?」と言い出した。
「あぁ、私も外で吸っている。外にバケツが置いてあるからそこに吸殻を捨ててくれ、私も付き合おうか。」
「いえ、一人にさせてください。大丈夫私は逃げたりはしませんから、それよりも逃げ出さないように監視して置いてくださいよ。」
「誰を?」
「犯人」

外に出ると薫は煙草を口にくわえながらあたりをウロウロし始めた。気温が低いが薫には関係がないらしい。そして薫は山荘の裏手にゴミ箱にしてあったポリバケツを発見し、その蓋を手に取り一言「手ごろだな」と漏らしたのだった。

 山荘内に戻った薫はまだ口に火のついた煙草を咥えていた。山荘内では煙草は厳禁だと言われたのに薫はお構いなしである。
「薫さーん、ここで煙草はダメですよぉ!」
「うるさい、黙れ」
薫は煙草を床に投げ捨てると吸いがらを踏み潰した。先ほどまでの態度は外にでも置いてきたと言わんばかりのその豹変ぶりと暴虐無人さにアリス、カァ、クイーンは目をむく。薫は三人から注目を受けている事を確認し宣言した。
「始めるぞ。」


 読者への挑戦状
 ここで一旦話を止め、筆者から読者への挑戦を行います。って一度書いてみたかった。
 これまでに書いた文章において被害者ポーを物言わぬオブジェに変えた人物を指し示すヒントを書きました。つまりここまでで犯人を当てる事は可能になったわけです、多分。
 ですのでここで読者への挑戦、犯人はどうやって部屋の扉を閉ざしたのか?犯人は一体誰なのか?と問題を出します。
ふぅ。プロのようには行かないねぇ、トリックありがちだし。ま、良い経験か。あと文字数多すぎて読者泣かせすぎると思う。

次回、といってもすぐ次の記事で解決編のっけます。
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